老人と少女
東京都内のとある公園には、ホームレスの老人が住み着いていた。老人はいつも公園のベンチに座って、何もせずぼんやりと空を眺めていた。
ある日、公園で遊んでいた小学生の女の子が、老人に話しかけてみた。
「おじいちゃん、何してるの?」
老人は女の子に目を向けると、にやりと笑った。
「何もしてないんだよ。ただ、空を見ているだけ。」
「空って、何見てるの?」
「何もないよ。ただ、空を眺めているだけ。」
女の子は老人の答えに首を傾げた。
「でも、空って何も見えないよね?」
老人はまたにやりと笑った。
「そうかな?僕には、空にいろんなものが見えるよ。」
「どんなもの?」
「星や月、雲、鳥たち。そして、ある時、僕は空に老人の姿を見たよ。」
女の子は目を丸くした。
「老人の姿?」
「そう。ぼんやりと座っている老人の姿が、空に浮かんでいたんだ。」
「それは、どうして?」
「どうしてかはわからない。でも、その老人はぼくを見ているようだった。そして、ぼくもその老人を見ているようだった。」
女の子は老人の話に、不思議な気持ちになった。
「おじいちゃん、その老人は、何をしてた?」
「何もしてなかったよ。ただ、ぼくを見ているだけだった。」
女の子は老人の話を信じようとはしなかった。でも、老人の目を見ると、何か真実を語っているように思えた。
それから、女の子は毎日のように公園に通うようになった。老人に話しかけるためではなく、空に浮かぶ老人の姿を見るためだった。
しばらくして、女の子はついに、空に浮かぶ老人の姿を見ることができた。老人はいつもと同じようにぼんやりと座っていて、ぼんやりと女の子を見ているようだった。
女の子は老人に手を振った。老人はゆっくりと手を振った。
女の子は老人の姿に、心が温かくなった。そして、老人に会いたいと思うようになった。
ある日、女の子は老人に声をかけた。
「おじいちゃん、空に浮かんでいる老人は、誰なの?」
老人は女の子に目を向けると、優しく微笑んだ。
「それは、ぼくだよ。」
女の子は驚いて、思わず後ずさった。
「おじいちゃん、どうして空にいるの?」
「ぼくは、死んだんだよ。」
「死んだの?」
「そう。でも、ぼくは死んだ後も、この公園を守りたかった。だから、空に浮かんで、この公園を見守っているんだ。」
女の子は老人の言葉に、涙がこぼれてきた。
「おじいちゃん、ありがとう。」
女の子は老人に抱きついた。老人は女の子を抱きしめ返した。
それから、女の子は毎日のように公園に通い、老人と話をした。老人は女の子に、いろいろなことを教えてくれた。
ある日、女の子は老人に言われた。
「いつか、ぼくはこの公園から消える。でも、ぼくは必ず、また会うよ。」
そして、老人は空に消えていった。
女の子は老人の姿を探したが、もう二度と会うことはなかった。
でも、女の子は忘れない。老人の言葉を忘れない。そして、老人が守ってくれた公園を、これからも守っていくことを誓った。
終わり
考察
この話は、ホームレスの老人が、死後も空に浮かんで公園を見守っているという都市伝説を元にしたものである。女の子は、老人の姿に心を動かされ、老人の話を信じるようになる。そして、老人と交流することで、成長していく。
この話のテーマは、**「死後も、愛する人を守り続ける」**というものである。老人は、死後も空に浮かんで、公園を見守っている。それは、自分が大切にしていた公園を、これからも守り続けていたいという老人の想いの表れである。
この話は、読者に、**「死後も、愛する人を忘れずにいよう」**というメッセージを与えるものである。