ヒノカミの怒り

山のふもとにある小さな村には、古くから火伏の神として崇められている神社があった。村の人々は、神社の火伏の神を信仰し、火事から身を守っていた。

ある夜、村のはずれの家から火事が発生した。火はすぐに周囲の家々に燃え移り、あっという間に村中に広がった。村人たちは必死に火を消そうとしたが、火勢は収まらず、村は炎に包まれた。

そのとき、村のはずれの神社から、赤い炎が立ち上がった。炎は空高く舞い上がり、村の中心部へと向かっていった。村人たちは、火伏の神が火を鎮めるために現れたのだと思った。

炎は村の中心部に到達すると、一気に勢力を増し、村の中心部を焼き尽くした。村人たちは、火伏の神が怒りをあらわにしたのだと考え、恐怖に震えた。

火事が収まってから、村人たちは神社を訪れた。しかし、神社は跡形もなく焼き尽くされていた。神社にあった火伏の神の像も、炎に焼かれて消失していた。

村人たちは、火伏の神が怒りをあらわにした理由を分からなかった。しかし、村人たちは、火伏の神の怒りを鎮めるために、新たな神社を建てることにした。

新たな神社が建てられ、火伏の神の像が安置されると、村では再び火事が起こらなくなった。しかし、村人たちは、夜になると、神社の境内から、赤い炎が立ち上がる幻影を見ることがあるという。

後日談

ある日、村の若者が、神社の境内で、奇妙な光景を目撃した。それは、神社の火伏の神の像が、炎に包まれて燃えている光景だった。

若者は、恐怖に駆られてその場から逃げ出した。しかし、その翌日、村人たちは、神社の火伏の神の像が、なぜか元通りになっていたことを知った。

村人たちは、火伏の神が怒りをあらわにした理由を、ようやく理解した。火伏の神は、村人たちが、火事の原因となった家を放置していたことに怒りをあらわにしたのだ。

村人たちは、火伏の神の怒りを鎮めるために、放置されていた家を解体し、村の外れに埋めた。それ以来、村では再び火事が起こらなくなったという。

解説

この話は、火伏の神の怒りを描いた怪談です。火伏の神は、村人たちを火事から守るために、村の中心部に炎を放った。しかし、村人たちは、火事の原因となった家を放置したために、火伏の神の怒りを買ってしまった。

この話の怖さは、火伏の神の怒りが、村人たちの予想をはるかに超えていた点にあります。火伏の神は、村人たちを守るために炎を放ったはずなのに、その炎によって村が焼き尽くされてしまった。村人たちは、火伏の神の怒りを鎮めるために、新たな神社を建てたり、放置されていた家を解体したりするが、それでも火伏の神の怒りは収まらない。

この話は、人間の愚かさを描いた寓話としても解釈できます。村人たちは、火伏の神の怒りを鎮めるために、さまざまな努力をしましたが、その努力はすべて無駄でした。それは、村人たちが、火伏の神の怒りの原因を理解していなかったからです。村人たちが、火事の原因となった家を放置しなければ、火伏の神の怒りは収まったはずです。

この話は、人間は、いくら努力しても、自分の愚かさから逃れることはできないということを示唆しています。