集落の森

山奥にある小さな集落に、ある風習があった。それは、毎年春になると、一人の男女を森の中に放ち、二人が生き延びるまで戻ってこられないというものだった。

この風習は、集落の守り神を喜ばせるため、古くから行われてきたものだった。守り神は、集落の豊かな実りをもたらす神であると信じられており、二人の若者の命を捧げることで、神の怒りを鎮め、集落を守ることができるとされていた。

ある年、その風習に選ばれたのは、村の青年・佐藤と、村の娘・由美だった。二人は、村人たちに見送られながら、森の中に分け入っていく。

森は暗く、深かった。二人は、道に迷い、お互いに助け合いながら、生き延びるために必死に進んでいく。

しかし、森は厳しい。二人は、野獣に襲われたり、毒草を誤食したり、様々な危険にさらされる。

それでも、二人は、お互いを支え合いながら、生き延びるために努力した。

そして、ついに、二人は森の出口を見つけた。二人は、村人たちの元に無事に戻ってきた。

村人たちは、二人の帰還を喜び、祝福した。そして、二人は、村の英雄として迎えられた。

しかし、二人は、森で見た光景を忘れることができなかった。森には、恐ろしい存在が棲んでおり、二人は、その存在に命を狙われていたのだ。

二人は、村人たちに、森の恐ろしい存在について警告しようとしたが、村人たちは、二人の話を聞こうとしなかった。

村人たちは、二人の話は、森で遭遇した恐怖から生じた幻覚だと思い込んでいた。

そして、翌年の春、また一人の男女が森の中に放たれた。

二人は、佐藤と由美の話を信じておらず、森の中では何も恐ろしいものはないと信じていた。

しかし、二人は、森の中で、佐藤と由美が見た恐ろしい存在と出会い、命を落とした。

村人たちは、二人の死を悲しみ、ようやく佐藤と由美の話が本当だったことに気づいた。

そして、村人たちは、集落の風習を廃止することにした。

しかし、もう遅かった。

恐ろしい存在は、森の中に棲み続け、村人たちを恐怖に陥れ続けていた。

終わり

 

解説

この話は、集落の風習を題材とした都市伝説です。

集落の風習は、村人たちの豊かな生活を守るためのものでしたが、その裏には、恐ろしい存在の存在がありました。

佐藤と由美は、その恐ろしい存在と遭遇し、命を落とすことになります。

この話は、集落の風習の恐ろしさだけでなく、人間の恐怖心の強さをも描いています。

村人たちは、佐藤と由美の話を聞こうとしなかった。それは、恐怖心から目を背けたかったからかもしれません。

しかし、恐怖心から目を背けても、恐怖は消えることはありません。むしろ、恐怖心は、より強固なものになってしまうのかもしれません。

この話は、私たちに、恐怖心と向き合う大切さを教えてくれるのかもしれません。