きさらぎ駅の男

 

ある日、東京から大阪へ向かう電車に乗った、20代の会社員の男がいた。男の名前は田中。彼は仕事で大阪に出張することになり、初めて電車で移動することになった。

田中は、東京駅から電車に乗って、大阪駅まで約5時間の旅を楽しんでいた。車窓から見える景色を眺めたり、スマホでゲームをしたり、時間を潰していた。

そして、電車は途中の駅で停車した。田中は、トイレに行きたくなったので、車両を降りた。

トイレを済ませて、ホームに戻ると、田中は不思議な光景を目にした。

ホームの端に、一人の女性が座っていた。女性は、黒いワンピースを着ていて、髪を後ろで束ねていた。顔は、暗くてよく見えなかった。

田中は、女性に声をかけた。

「すみません、大阪行きの電車はいつ来るんですか?」

女性は、田中をじっと見つめた。そして、ゆっくりと口を開いた。

「もう、電車は来ないよ」

女性の声は、かすれていて、不気味だった。

田中は、首を傾げた。

「え?どういうことですか?」

女性は、何も答えなかった。ただ、田中を見つめ続けた。

田中は、少し怖くなってきた。そして、女性から離れようとした。

しかし、女性は田中の腕をつかんだ。

「待って」

女性は、田中の顔を覗き込んだ。そして、こう言った。

「きさらぎ駅にようこそ」

田中は、女性の言葉の意味が分からなかった。

「きさらぎ駅って、何ですか?」

女性は、首を振った。

「それは、教えてあげられない」

女性は、田中の腕を離して、ホームの端に歩き出した。そして、線路に飛び降りた。

田中は、女性の姿を呆然と見つめていた。そして、やっと我に返って、女性を追いかけた。

しかし、女性はすでに線路の向こう側にいた。田中は、女性を呼びかけたが、女性は振り返らなかった。

田中は、女性を追いかけようとしたが、線路に足を踏み入れてしまった。そして、電車が迫ってくるのを感じた。

田中は、必死に逃げようとしたが、間に合わず、電車に轢かれてしまった。

田中は、死んだ。

しかし、田中の魂は、きさらぎ駅に囚われたままだった。

田中は、毎日、ホームで女性を待っていた。しかし、女性は二度と現れなかった。

田中は、きさらぎ駅から抜け出す方法を探し続けていた。しかし、その方法は、誰にも分からない。

田中は、きさらぎ駅に永遠に囚われたままなのかもしれない。

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このショートストーリーは、実際には存在しない駅「きさらぎ駅」を舞台にしています。きさらぎ駅は、2004年にネット掲示板に投稿された都市伝説で、実際には存在しない駅ですが、多くの人に恐れられています。

この物語では、きさらぎ駅に迷い込んだ男性が、女性と出会い、そして不幸な結末を迎えます。女性は、きさらぎ駅に囚われた亡霊なのかもしれません。

この物語の怖さは、その不条理さにあります。きさらぎ駅は、普通の人間には存在しない場所です。そこに迷い込んだら、どうなるのかは誰にも分かりません。

また、女性の正体も謎です。彼女は、なぜ田中をきさらぎ駅に誘ったのか。彼女は、田中に何をしようとしていたのか。

これらの謎が、読者の想像力を掻き立て、怖さを増幅させます。

この物語は、電車に乗るときの注意喚起としても読むことができます。きさらぎ駅は、実際には存在しない駅ですが、同じように、危険な場所は、日常生活の中にも潜んでいるのです。

電車に乗るときは、周囲に注意し、不審な人物や不審な状況には近づかないようにしましょう。